白い世界

       

「寒い」

『国境の長いトンネルをくぐると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった……とか
ここに来たとき言いたくなったわ』

はアマテラスに跨りながら、冷えていく手でしっかりとアマテラスの毛を掴んでいた。
魂の底から声が聞こえるが、あえて無視する。
何処かで聞いたことのあるフレーズが聞こえたが、何処で聞いたかまでは思い出せない。
信号所も汽車も、この世界にはない。この場所にはない。あるのは雪だ。
一面、銀世界だった。
吹雪いている。どうしようもないぐらいに吹雪いている。元の世界では異常気象と報道されても
おかしくないぐらいに吹雪がとアマテラスを攻撃していた。そして

「オキクルミの話によるとこの土地は危機に瀕してるって言うがその通りだぜェ、オイラもここまで荒れてる
カムイを見るのは始めてだィ」

アマテラスの毛の奥にいたのはコロポックルのイッスンだ。
三人、もしくは二人と一匹がやってきたのはカムイと言う土地だ。イッスンの故郷らしい。
キュウビを倒したときに湧き出た影が北へと飛んだこともあるが、ウシワカの導きでカムイまでの道を開いて
ここまで来たのだ。がそこで知ったのはこのナカツクニには各種のオーバーテクノロジーがあるらしいということ
だった。遺跡のトンネルをくぐり、カムイに来た。

「……オイナ族だっけ……アレ……強かった」

「クトネシリカを持ち出してるとはなァ……」

「……知りたいことはあるけどまずは大神降ろしだね。芽、何処?」

カムイは極寒の地で、薄着であったは寒さを訴えた。暖を取る場所を探そうと言うイッスンの提案を受けて
探していたところなまはげと出会い戦闘、そして勝利、ようやく暖を取れるところを見つけたと想ったら
青色のクマの仮面を付けた男オキクルミという男と戦闘になった。最初はが戦い、次はアマテラスが闘った。
彼は人間の姿から獣の姿になった。
オイナ族という種族らしい。彼から多少の事情を聞けたものの、妖怪を斬らなければならないと言い、去っていった。
暖を取った後で、やるべきことをまず大神降ろしと定めた。

「ワウ」

「解る……アマテラス?塞の芽の場所……」

大神降ろしとは大地を蘇らせ、穢れを払うことを言う。大地の生命を司る塞の芽をアマテラスの力で咲かせるのだ。
吹雪で分かりにくかったがカムイも穢れている。タタリ場が蔓延しているのだ。
アマテラスに聞くと、アマテラスは立ち止まり、塞の芽を探しているようだった。

「解らなねぇのかィ。アマ公!」

『……仕方ないわよ……ここ。穢れが酷いのに加えて妖気も濃いわ』

魂の底から声がした。が盟約を結んでいる武器……と呼ぶべきもの、『カルヴァリア』の化身、リアだ。
寒さを感じないリアが羨ましいとは想う。彼女は幽霊のようなものなので暑さも寒さも感じない。

「寒さのせい……もありそう……頑張ろう。アマテラス……私も探るから」

『正確に言うと私なんだけど』

「……大神降ろしして楽になるぞー!」

「ワウ」

冷ややかな言葉を無視しては気合いを入れる。アマテラスが鳴く。まずはやるべきことは、やらなければならない。



気合いを入れ直した為か、大神降ろしは無事に成功した。塞の芽を見つけたは良かったものの、巨大な岩で塞がれていた。
岩を壊す為に旅の途中で逢ったヨイチが弓の練習をしていたので、矢を放ったのを見て、矢に筆調べの迅雷を使い、
雷を足して破壊した。出てきた塞の芽に桜花一、花咲を使い大神降ろしをした。
は大神降ろしが好きだ。初めて見たときにこんなに綺麗なものがこの世にあるとは信じられなかったぐらいだ。
元の世界で綺麗だと言われている高い絵や彫刻を見てきたがここまで心が高揚しなかった。

「生き返るぜェ……」

「火は人類の最初の発明とか言われていたような気がするけどその通りだよね」

ヨイチが残した小屋に入り、とアマテラス、イッスンは暖を取っていた。ヨイチは弓の修行に行ってしまった。
自分の弓が災いを呼ぶとカムイまで来た……その災いを起こした原因はアマテラスやであったが……ヨイチであったが、
吹っ切れたようだ。

「ワウ」

アマテラスも暖かくなったのか機嫌が良い。

「……あの鶏が側にいれば暖かいかも知れないと想ったけど」

「燃神様かァ……姉、まずは着物を何とかした方が良いと想うぜェ」

鶏とが呼ぶのはアマテラスの力の一つである紅蓮を司る燃神だ。キセルを加えた鶏である。

「西安京で貰っては居たけど、この寒さはね……まずはカムイの探索だけど……」

西安京はつい最近まで居た場所だ。は女王、ヒミコから着物を貰っている。西安京でも色々とあった。
仕方がないことだとは言え、ヒミコを喪った。もイッスンもアマテラスも火に当たり続けている。

「まずは暖まってからでィ」

「ワウ」

「賛成!……イッスン、この辺に詳しそうだから案内を頼める?出来れば村とかに行きたい」

オイナ族の村が近くにあるだろうとは推測を立てている。イッスンは嫌そうに言っていた。

「……オイラは気が進まねえが」

「ワンッ!」

「……仕方がねェ。姉は土地勘とかねえだろうし、アマ公はぽけぽけだしなァ」

イッスンはカムイを飛び出したらしい。オキクルミの話やウシワカの話で察しがついているがは深く探索しない。
リアは虫にも事情があるのね、と言っていた。

「遭難するのは嫌」

『そうなりかけたらマッチ売りの少女の如く、辺りを火刑にしてみたら?』

(……あれ。マッチ売りの少女ってそんな話だっけ)

真顔でリアは言っているが、アンデルセン童話のマッチ売りの少女は決してそんなことはしていない。

「オキクルミがクトネシリカを持ってることも気になるしな。誰も止めねぇってのが」

「止められないんじゃない?強いし」

「……アイツ並に強い奴は居るぜェ……」

クトネシリカというのはオイナ族にとっては大事な剣らしい。と言うかカムイ全体とも言うべきだろうか。
オキクルミはクトネシリカに青鈍色の光を宿す為に妖怪達を切り刻んでいるようだ。カムイには
”クトネシリカが青鈍色に輝く時、氷壁は砕かれ天への道は開かれん”と言う預言があることを聞いた。

「……どうなの。あの剣」

『―――――妖怪、沢山斬ったみたいね。あれだけ斬って刃が錆び付かないのは特別な刀よ』

「それ以外は」

『クトネシリカ。元の世界にも同じような剣があるわ。これはアイヌに伝わっているのだけれども……そう言えば、
アイヌ民族とオイナ族は似ているところがあるわね。下僕が暇つぶしに話していたわ』

小声で呟き、はリアに話す。
リアはの視界を通してクトネシリカを見ている。沢山斬ったの一言で片付けていたが、言葉の通り、
沢山、斬りつけたようだ。

(……暇つぶし……寝てればすむ癖に)

話していたではなく、正確に言うと話させたのだろう。下僕というのはの相棒のような普段は猫の姿を取っている者だ。
アイヌ民族は北の方に住んでいる民族であると聞いたことがある。漫画やゲームでたまにモチーフになるものだ。

「ワウ、ワウ」

「……考え事してた。そろそろ行く?」

火に当たり続けていても、物事は解決しない。はアマテラスの鳴き声から何を言いたいのかを察せるようには
なっていた。

「ワウ」

「もうちっと暖まって居ようぜ。寒いったらありゃしねェ」

「……夜になればもっと寒いよ……野宿は避けたいし」

人間は体温と水分と栄養を何とかしておけば死なないと聞いたことがある。今は昼だ。昼ではあるが、太陽が遠い。

「行くか」

渋々イッスンが同意する。火はそのままにしておいた。ここを拠点にするからだ。大神降ろしをした後も、
一部のタタリ場は残っているし、妖怪達のたまり場である羅生門も残っている。
根本的な問題として北に居るであろう魔物を倒さなければならない。外に出ると、雪が降り積もっている。

『向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ……』

「……それ、何だっけ?」

『川端康成の雪国よ』

肌を刺すような寒さがを包む。引用文のタイトルと作者を言った後でリアの声は聞こえなくなる。
心の底に沈んだようだ。アマテラスがの側にいて彼女を見上げている。

「終わりが近いかも知れないけれど、きちんと終わらせようか」

「ワウ」

右手を出すとアマテラスが手を舐めた。は目を細めて微笑むと、アマテラスに跨る。
白い毛並みが雪に溶けそうだとは想った。赤い隈取りが、目印となっていた。



【Fin】

武器鑑定能力と言うか、魔剣や聖剣の類だと彼女の方が鑑定能力が高いです。それでもこの世界だと余り解らないっぽいですが、
うろ覚えカムイなのでちょっと違っているところがある気がします。

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