待ち合わせはツリーの下で

       
「悟、遅いな……」

はクリスマスツリーの前で斑鳩悟を待っていた。
彼女がいる場所は日本ではない。ドイツだ。ドイツにあるドレスデンという都市である。
高校を卒業したはASEに就職をして、心理学の専門家、もしくは交渉の専門家として働いていた。
恋人になる斑鳩はASEドライバーとして働いている。
今日はクリスマスであるが、何とか暇が取れた状態だ。
ASEは『Almighty Support Enterprise』の略であり、様々な専門家が
在籍していて依頼によって各地に派遣されていた。
二人はお互いにバラバラの依頼を受けていた。も斑鳩も合同の任務もあるが、殆どは別々だ。

!」

お昼時を回り、三十分ほどが経過してから斑鳩がようやくの前に来た。息を切らせている。

「任務、ご苦労様」

「……どうにか片付けてきた……」

「ドレスデンのクリスマスマーケットは有名だよ」

クリスマスマーケットはドイツが発祥と言われているクリスマスまでの期間限定の市場だ。
斑鳩はヨーロッパの別の国で依頼を受けていたのだが、終わらせて、の元に来た。場所を指定したのは、
であるために斑鳩はクリスマスマーケットについてはよく知らない。

「美味そうな臭いがしてるな」

「雰囲気ってのが無いのかい? 悟は……食い意地が張ってるんだから」

「あんまり飯、食べてないんだよ」

「店を探して食べよう。ボクもドレスデンは久々に来たけどね。クリスマスマーケットは屋台も多いんだよ」

こっち、とが案内をしようとしたが、斑鳩が開いていたの右手を自分の左手で繋いだ。
も斑鳩も手袋をしていた。は高級そうな毛糸の手袋だが斑鳩は安物の毛糸の手袋だ。

「人が多いから、はぐれないようにしないとな」

「……君ってば……」

空は灰色だ。
は照れながらも斑鳩と共に歩いた。途中でクリスマスマーケットについての説明をしておく。
ドイツ語では、『Weihnachtsmarkt(バイナッツマクルト)』と言い、クリスマスが終わるまでのドイツは
何処の都市でも街でも飾り付けているという。日本のお祭りに移動遊園地を足してさらに市場を足したようなものだと
教えた。屋台でソーセージを買ったり、斑鳩が胃を満たすものが良いと言ってきたので
ボリュームのあるようなものを中心に屋台で頼んでいき、開いたテーブルで食べることにした。
向かい合わせに座る。

「日本はクリスマスはこんな風に騒がないけどな」

「最近は日本でもやってるらしいけどね。市場だけみたいだけど……日本だなって想うよ」

「何でも取り込むのが日本らしいしな……この肉、美味い……」

日本人は柔軟であり、外国のイベントを自分達なりに取り込んでしまう。斑鳩は必死で肉を押し込んでいた。

「一人前のASEドライバーになったというのにこの辺りは変わらないね」

と斑鳩が出会ったのは斑鳩が中学校を卒業し、高校生になろうとしていたときだった。アメリカでと出会い、
事件に巻き込まれたのだ。は斑鳩に興味を持ち、やることもなかったので、ASEに入った。
やっていたことの決着は斑鳩と出会う少し前に終わっていたのだ。
高校を卒業する直前にASEを揺るがす大事件が起き、斑鳩はその事件を解決して、師匠である百舌鳥創に認められた。

「俺はまだまだだよ。父さんや百舌鳥さんには及ばないから」

「謙虚だね……夜になるとドレスデンはライトアップされて綺麗だよ。それまで居られたらいいけど」

「お前の故郷ってドイツだよな」

「ドイツだね。ここじゃないけど……館の方はもう無いよ」

斑鳩に自分の過去をは話したことがある。
日本人の血が入ったアーリア人であり、ナチス・ドイツで研究されていたとされている魔女の血を引いていること、
ナチスの残党によって育てられたが館が壊滅し、斑鳩と会うまでは世界中を旅していた。
旅とは言っても観光旅行ではないが。

「何処もドイツはこんな感じって言ってたよな。クリスマス」

「そうだよ」

「来年も余裕があったら、今度は別の都市に一緒に行こうぜ。

来年のことなどは分からない。斑鳩もそうだ。ASEは危険な任務もあるため、命も狙われる。
でも、来年があるならば。
更に先まで続いているならば、斑鳩と共に生きたいし、過ごしたい。

「行こうね。ファルケンブルグとかドルトムントには自称だけど世界一のクリスマスツリーがあるし」

「自称かよ」

「約束。指切り」

は左手を出すと小指を立てた。斑鳩は食事の手を止めると右手の小指でと指切りをする。

「俺、お前に後謝らないと行けないんだがプレゼントとか用意してない」

「奢って貰うから構わないよ。食事代の分も。それぐらいのお金はあるよね?」

「ある……はずだ……」

悪戯っぽくが笑うと斑鳩が財布を出して中身を確かめていた。高校時代の貧乏性が彼は未だに抜けていない。
斑鳩の様子がおかしくて、はもう一度笑うと斑鳩の頬に口付けた。

「君のそう言うところは好きだよ」

「お前、不意打ちだぞ」

茫然となった斑鳩だったが、彼も笑うとの唇にキスをした。


【Fin】

戻るときはブラウザバックで。

久しぶりに書いたがなんだろうこのふたりは……書きやすいんだが……甘い?甘いのか?
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