十二月二十五日、黒子は帝光中学校の調理室を借りてケーキを作っていた。
『キセキの世代』と呼ばれている五人と『幻の六人目』と呼ばれているの双子の兄とを加えたマネージャーの
三人でのパーティだ。企画をしたのは部長の赤司である。
やる気になった赤司は学校から調理室の使用許可を取り、パーティをしても良いと言う許可も得た。
「これぐらいで良いか? 」
「ナイスよ。ブルー」
ボールで生クリームを泡立て器でホイップクリームにしていたのは青峰大輝だ。
話し合いの結果、部費からパーティ代を出すことにして……帳尻は後でどうにか合わせるらしい……オードブルなどは
買うことにした。作るのはケーキだけだ。だけとは言っても、作るのは三つである。
まずは定番のショートケーキだ。
青峰が手伝いなのは消去法である。黄瀬涼太には雑用をさせると赤司が引っ張っていき、緑間真太郎はパーティ会場の飾り付けを
担当することとなった。は知らないが緑間がを手伝おうとするとのことが好きな緑間が
上手く緊張のため動けないため、手伝いはやめにした。
黒子は『キセキの世代』の一人である紫原敦やマネージャーである桃井さつきやと買い出しだ。
赤司はパーティ会場の飾り付けをしている。
「ケーキは三つってのは、俺等と女性陣と……」
「一つはシゲンが食べるのよ。クリスマスプレゼントは大きなケーキが良いって」
シゲンは紫原敦のことだ。
クリスマス前に皆のプレゼントを用意することにしたは一人一人にプレゼントの内容についてアンケートを採っていたが、
紫原はケーキを希望していた。普通なら六人ぐらいが切って食べる大きさのケーキを一人で食べると言ったのだ。
「胸焼けしそうだな」
「身長がまた伸びたら……お兄ちゃんにも数センチ分けて欲しいのに」
「分けられるもんでもねえしな……」
調理室には暖房がかかっている。オーブンではスポンジケーキが焼かれていた。
スーパーではスポンジケーキだけが売っていて、飾り付けだけをすればケーキが出来ると言うものもあるが、
は最初から作っていた。
彼女は料理が上手い。お菓子作りも得意だ。
「男性陣はチョコレートケーキ食べてね」
「紫原にはどんなケーキを作るんだ?」
「これから言うわ。ブルーが手伝ってくれて助かる……とかでも良かったんだけど」
「はさつきの制止だろ。さつきが張り切りそうなのを止めたんだぜ……」
オーブンがスポンジケーキが焼き上がったことを知らせる。自分で振った話題ではあるが、話題のある意味の危険性に
は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
クリスマスというのは正確に言えばキリストの誕生日ではない。
『神の子が人として生まれてきたこと』を記念する日なのだ。でも、日本ではクリスチャンを除いてはキリストの誕生日と
認識していて、祝いに使っていそうではあるとは考えた。
「……の誕生日って、今日だよね?」
「はい。だからキャプテンが、わたしの誕生日もお祝いするから派手にしようって」
「クリスマスと一緒だと、まとめられない? オレはやだなー誕生日に食べるケーキとクリスマスに食べるケーキが一緒なんて」
の誕生日はクリスマスだ。
そのため、クリスマスと誕生日は共に祝われていてプレゼントも誕生日分とクリスマス分が足されているとは言うが、
一つだけのプレゼントであることに変わりはない。
午後三時頃、街中では子供にプレゼントを買った親やカップルが目立っていた。
「紫原くんは甘いものが大好きですね」
「お菓子が好きなの。のケーキが今から楽しみ」
紫原がにケーキを頼んだことはも黒子も、桃井も知っていた。紫原は荷物持ちと言うことで
オードブルやお寿司を持っていた。黒子達もシャンパンやジュースが入った袋を持っている。
身長が二メートルを超す紫原は目立っていた。
「青峰くんが手伝っているのよね……”さつきに手伝わせるぐらいなら俺”がって酷いわ」
「だって、みんな、死にたくないもし、俺もケーキを殺したくないもん」
「紫原先輩! 死ぬは大げさです。死にかけるぐらいで……」
桃井は料理が下手であり、仮にを手伝うとしたら、確実にケーキが駄目になってしまう。
紫原を咎めているようなだが、咎めになっていない。
「桃井さん、桃井さんは桃井さんの出来ることをすればいいのです」
テツくん! と桃井が黒子に抱きついていた。
「紫原先輩は先輩にプレゼントを買ったんですよね?」
「買った。の分も桃ちんの分も買ったから」
赤司の提案で男性陣は女性陣にそれぞれプレゼントを買い、男性陣はプレゼント交換をすることになっていた。
女性陣は言うと一部は三人合同で買い、三人バラバラで買った人も居た。
「会場の飾り付けはちゃんと出来ているかしら」
「してるでしょうね……そこそこには」
「帰って、手伝いましょう」
「んー寒いし、ね」
買い出しを終えた四人は速めに帝光中へと戻る。防寒具を着込んだとは言え、外は寒いのだ。
パーティ会場は部室だった。
が全てのケーキを青峰と共に作り終わり、ケーキを運んでいく。二つめのケーキを運び終えたところで、
黒子達も帰って来ていた。オードブルも並んでいる。
「、ただいま」
「おかえりなさい。シゲン。お兄ちゃんやさつき、もご苦労様」
「緑間、そこ開けてくれ。ケーキを置く」
「このケーキは……紫原用か?」
テーブルの上に重ねられた白皿が載っていたが青峰が緑間に頼んでどかしてもらい、青峰がケーキを置いた。
置かれたケーキはアンズが載ったチョコレートケーキだ。
「違うわ。ミーゼシュカラーチュ・トルタ、ハンガリーのケーキよ」
「……君はハンガリー料理を作るなとあれほど」
「ケーキだからいいじゃない」
「私達のはストロベリーショートケーキよね」
黒子がハンガリーという地名を聞いて嫌な顔をした。
ハンガリーは黒子兄妹の母親が遺跡を掘るために滞在している国であり、たまに帰ってくる母親はハンガリー料理を
作るのだ。
ミーゼシュカラーチュ・トルタは中に乾燥プルーンやアンズが入ったケーキである。
さつきが眺めていたのはミーゼシュカラーチュ・トルタと比べたら小さめの大きさの苺のケーキだ。
円形をしている。
青峰が両手でケーキを抱えてきた。
「紫原、これがお前のケーキだ」
作ったスペースに青峰がケーキを置いた。
が紫原のために作ったのは苺やブルーベリー、キウイやバナナなど色とりどりのフルーツが載ったトルテだった。
トルテは焼き菓子のことであり、クリームやフルーツで飾られたお菓子のことだ。
「すっげー美味しそう!! 、作ってくれてありがとう。大好き!!」
紫原はトルテに満足し、に抱きついた。力を込める。
「痛いから……苦しい……」
「――紫原!! が迷惑しているのだよ!」
「羨ましい?」
「……誰が……」
緑間が怒って止めるが、紫原はいつもの何を考えているのか分からないような表情で緑間を挑発した。
顔を赤くして緑間が怒る。
「……羨ましいって、緑くんも甘党だったわね」
「先輩……? 確かに緑間先輩も甘党なのですが……」
「、緑間の不憫は楽しむんだ」
抱きついている方についてを紫原は言っていたのだがは受け取り方を間違えていた。
が困惑していると青峰がの肩に手を置いた。
「準備は出来たかー?」
「待たせたッス! ゲームも準備したッスよ」
「紫原、から離れろよ」
赤司と黄瀬が部室に入ってきた。赤司の言葉に紫原はから離れる。黄瀬が将棋やトランプなどを持って来ていた。
ご馳走はすでにテーブルに並んでいる。
「パーティの始まりね」
「ケーキ。ケーキ。ケーキ」
「シゲンってば……」
「今度は誕生日に作ってね。」
ここまで嬉しそうにされると作った者としては嬉しかったり、照れたり、気持ちが混じり合う。
は微笑んで紫原に言った。
「誕生日になったらね」
――余談ではあるが、紫原がに用意したプレゼントはと言うとお菓子作りの本であり、自分が食べたいお菓子が
書かれていたものだった。料理の好きなは喜んで受け取ったが、緑間や黒子はまた食べるのか、と
呆れていた。
【Fin】
前にリクエストがあったのでかいてみた機嫌の良い紫原。こんなノリでいいのだろうか……
青峰とヒロインのコンビは書きやすい
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