高遠遙一にとって平和はあるような、ないようなものだった。
「遙一、おはよう」
「おはようございます。」
イタリアからヨーロッパの各地、さらにはアメリカに移動をして各都市を巡り、この場所に定住をしてから数ヶ月、ロサンゼルス郊外にある町にも馴染んできた。
はずだ、とつけそうになってしまったが、同居人である・クローバミアが来たため、思考を中断する。
彼らが住んでいる場所は教会だ。高遠も牧師のふりをして住んでいて、は家族が用事があるため預かっている子となっている。
もう一人の同居人である雪平はは朝食を作っている最中だ。
「薔薇の花」
前の教会の主は薔薇が好きだったらしい。その主は行方不明になっていた。調べて貰ったが死んでいた上に事件になりそうだったので、に解決して貰った。
高遠もも推理能力はあるが、探偵として表立って動きやすいのはなのだ。
「レッドクイーンです」
が薔薇の花を手に取る。
レッドクイーンは赤い薔薇の花だ。赤の女王と称される薔薇は花が重なっていて美しい。一口に赤薔薇と言っても百種類以上が存在する。
薔薇庭園と呼んでも差し支えない庭には多種多様の薔薇の花が咲いていて、高遠が暇つぶしに手入れをしている。
「青い薔薇もあるわよね。この庭」
リサイクルサリーのエプロンを着けたが右手にフライ返しを持って庭に現れた。朝食は作り終えているのだろう。
「ブルーベリーヒル」
が指さした。
庭の一角に咲いているブルーベリーヒルと呼ばれた薔薇は青薔薇と言うよりも薄い紫の薔薇である。アメリカで出来た薔薇だ。
「薔薇は青の色素がないからどうしても紫系統になるのよね」
「黒薔薇も、どす黒い赤、のようなものです」
「薔薇に黒い色素はないの」
青い薔薇は何種類か有るが、高遠の知る限りでは近い色でも青寄りの紫色で、青空のような色をした薔薇はない。黒薔薇と呼ばれる薔薇も、赤色を濃くしたものだ。
眠くないのかははっきりと話していた。
「庭に咲いているのは黒真珠とボンヌイ、ノアールです」
高遠が指さして教えていく。はまだ知識はあるがは薔薇の知識が薄い。興味が無かったから覚えてなかったようだ。
彼女もガーデニングが趣味だと昔に行っていたが彼女のガーデニングが家庭菜園である。食べられるもの重視だ。
「ノアール、赤なような黒なような」
「分類的には黒です。寒いと色が増します」
「前の人は本当に薔薇が好きだったんだね」
教会の建物や側にある住居は高遠達が有効活用している。
「庭に死体とか埋まっていそうです」
「桜かい。事件は解いたけど、埋まってないわ」
桜の木の下には死体が埋まっているというのは日本の有名なフレーズだ。高遠の言葉をが受け止めて返す。
が朱色の薔薇を指先でつついた。朝露に濡れている。
「インターフロラ」
「……全部似たような薔薇にしか見えないわ」
「仮に花の一部が薔薇に見えなかったら貴方の頭が狂っているということです」
朱色の薔薇はインターフロラという。この庭には薔薇しかない。
「似たようなっていうか、は種類が分からないだけだよね。薔薇って三万種類から五万種類有るから。そして淘汰されていく」
「品種改良で新しい薔薇が産まれるんですよ」
「原種は?」
「その黄薔薇がそうです」
品種改良で毎年新しい薔薇が産まれるが人気の問題などにより、残るのは少ない。高遠が指さした薔薇をが眺めた。
黄色い薔薇で、花びらが重なっている。
「ロサ・フェティダ・ペルシアーナだよ」
「世話は高遠に任せておくか。どこかにスペースがあればガーデニングしたいんだけど」
「雰囲気が壊れるので貴方のガーデニングは辞めてください」
「あさごはん、たべる」
「食べようか。テーブルと礼拝堂に飾るのに薔薇の花がほしいけど、適当に見繕ってよ」
適当とは高遠に丸投げした。
が空腹を訴える。
「切ってきますので二人は先に行ってください」
言われたとが建物内に戻る。高遠は周囲の薔薇を見回して、その中の一部を切る。
切ったのは、ダークピンクの薔薇の花々であった。
花言葉は『感謝』である。
(口にはしませんが)
悪くはないのだ。この数年。
事件に巻き込めたり自分の性分を確認したりしながらも、おおむね穏やかであるからだ。
【Fin】
何か同じパターンばっかな気がしないでもないですがこれの後にいくつか事件をやったあと二十代の方が伯父さんに呼ばれて日本、十代の方も用事で分かれて高遠の方はとりあえず日本の後で魔術見てあれと
言う流れ。押してくれてありがとうございました。
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