Welcom to my World

月野真夜様        
非日常と言っても、それが繰り返されて起きてしまえば日常とさして変わりなく。
異世界に渡るといった行為も、少女にとってはある意味日常となってしまった頃。
何時もの様に友人たちと過ごし、一人離席した時何時ものように、しかしタイミングを計ったように右手の対の指輪が光った。

「今回はどこに、」

行くのだろう。

言葉は最後まで発せられる事無く、少女の姿は光の中へ消えていった。









そしていつものように世界を渡ったのだけれど。
ソレは、すでに日常の範疇にはいるものではなかった。

ノイズが走る様な感覚の中、水が触れるような感触が肌をなでる。知覚しにくいほどの巨大な存在が周囲を通り抜け、軽く腕をひかれた。

――― 呼ばれたのだ。

何かに。
何に?

わずかな瞬間の自問自答に答えなどなく。しかしそれは彼女が渡り終えた時に解消された。

硬い床に靴が当たる。
閉じていた瞼を持ち上げれば、そこには、

「やぁ、いらっしゃい」

青いコートを着た、笑顔の青年がいた。

『あら、青年じゃないわよ』

しっかりと訂正がはいる。その声音は何処か懐かしげなもので。
というより目をこらさなければ分からない程、彼女の雰囲気は女性でも男性の物でも無い。敵意といったものは一切なかった。
不思議に思う少女をよそに、彼女は一人言葉を続ける。

「いやーあのままだとエロゲの世界へ突入しそうだったからさぁ。ついうっかり手を出しちゃったんだよね」
「じゃぁ、私を呼んだのはあなた?」

問えば、そうだよ、とあっさりと返る。

「なんか君にその意思がなかったみたいだし。迷惑だった?」

聞かれた言葉に少女は首を振る。
血にまみれた世界ならまだしも、エロゲ、はようするにエロい事ばかりの世界? そういう所には行くつもりはない。
そう言った事ばかりではないんだろうけど。

「とりあえず、初めまして(・・・・・)になるのかな。私はラスリア・ユーグ。ここの統括をやってる」

差し出された手を取り合えず、握り返す。

「アディシアです」

統括、ばらばらのものを一つにまとめる事。
要するに、何かの組織の偉い人と言う事だろう。
変わらず笑みをたたえたままのラスリアは、着いてきて、言ってアディシアに背を向けた。

『大丈夫よ』

妙に確信した声が後押しする。
そうは言うもののどちらにせよ事情が良く解らない現状では、友好的なラスリアの言葉を聞いておく方が有益である。
後に続くように広場から階段へと足を伸ばした。

緩やかに上へと昇るそこは、先ほどまでいたホールのような場所もそうだが、光源らしきものが無いのにはっきりとした明るさを持っている。
壁自体が光っているのか、といえばそうでもなく。まるで光だけが降り注ぐような。
更に付け足すなら、ここというよりこの施設だろうか、人為的に空間が歪められている感触がある。
ただそれは悪影響を及ぼすようなものではなく、まるであって当然の様な、自然さを感じさせた。
全てにおいて不可思議、そういった印象を与える場所だ。

広過ぎない階段に微かな靴音が響く。
そんな中、思い出したかのようにラスリアが口を開いた。

「あ。とりあえず、君の帰還条件は書き換えさせて貰ったから、この世界の規定である1週間を過ごせば元の世界に帰れるよ」

本当、あっさりと告げられた。

世界によって、確かに条件が難しく、面倒くさかったりするのだけれど。
そもそも。アディシアにしてみれば自分を呼びこんだり、簡単に帰還条件を決められたり出来るというその存在は、

さして長くもない階段を登り終えた先は、光に満ちて、眩しさに一瞬思考を止めた。
ラスリアは青いコートを翻し、笑った。

「ようこそ、我が有幻界(世界)、セイクレドへ」




有幻界、それがこの世界の名前。




書いて貰った話その2。コレの続きがエンデデアトロイメライになります。続きと言っても大分勝手に書いてますが。

もどる
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送